サークル・史の会

第699回学習会

江戸庶民の旅・前編

日 時:3月17日(日)午後2時45分~4時45分
場 所:亀戸カメリアプラザ5階第2研修室
発 表:笛木 隆雄

旅行が趣味という人は多いと思いますが、実は江戸の庶民も大の旅行好きでした。旅行先としてとくに人気だったのが伊勢参りです。その中でも20年に一度の遷宮が大人気でした。1830年の遷宮のときには、日本中の実に6人に1人が伊勢を目指したという説もあります。
空前の旅ブームが起こった要因はなんでしょう。道路や宿場が整備されたこと、幕府が旅をしやすいように規制を緩和したこと、庶民の生活にゆとりが出来たことなどがあります。では実際に旅に出てみると、交通手段は歩くだけです。関所越え、川越え、宿泊、おいはぎ、強盗、雲助等の困難が立ちはだかります。となると、さぞ辛い旅だったのでしょうか。
「江戸庶民の旅」を考える学習会は今回と9月に2回に分けます。前編は旅ブームが起きた要因についてお話をします。後編は実際の旅の様子についてお話をします。


[学習会報告]
                                        笛木 隆雄
江戸時代、農民や町人などの庶民が日本国中を盛んに歩き回った時代でした。旅の目的は主に信仰と湯治だったが、特に「死ぬまでに一度はお伊勢参りをしたい」という庶民の夢が強かったお伊勢参りが中心だった。お伊勢参りは江戸中期頃から盛んになり、文政3年(1830)に参宮者が約500万人に達したほどでした。
旅が誰にでも行けるようになった要因は1603年から東海道を始め、陸路や水路、宿泊施設が整備されたこと。また一方では、社会が安定し、安心して旅ができるようになったこと。経済が成長し庶民の生活が豊かになったこと。お金がかかる旅行費用の調達制度「講」が成立したこと。幕府も手形発行手続きの簡素化を図ったり、通行の自由を容認したりと後押しをした。1800年以降、旅情を掻き立てる出版物が数多く出版されたことも要因です。
ここまでを今回お話をしました。お聞きいただいた方は34名でした。ありがとうございました。次回「江戸庶民の旅・後編」は9月学習会を予定しています。いざ旅立ち、行った先々の苦労や楽しみをお話しします。