サークル・史の会

2018年トピックス ソメイヨシノのサクランボ

ソメイヨシノのサクランボ (2018.04.08訪問)
 この日、四季の森公園でサクラを見ながらふと話題に上った話なのですが、皆さんはソメイヨシノにサクランボは実るのかどうかご存知でしょうか? 多くの方が知るように、ソメイヨシノとはオオシマザクラとエドヒガンを交配して作られた一代限りの品種であり、実生ではなく接ぎ木により増やされているため、世界中のソメイヨシノは全て同じ遺伝子を持つ、いわば「クローン」なのです。それ故に「普通に考えると同じ遺伝子を持つもの同士で子は成せないはずで、つまりソメイヨシノにはサクランボは実らないのではないか」と、この日はこういう結論に達したのですが、しかしよくよく観察してみると、ソメイヨシノと思われる木にもサクランボっぽいものが見られたりして、「あれ、じゃあこの木はソメイヨシノではないのか?」と、いま一つ釈然としませんでした。

秦野南小学校の樹齢130年近いソメイヨシノ秦野・今泉名水桜公園のソメイヨシノ

 しかし後日このことを調べてみたところ、実はソメイヨシノにもちゃんと生殖能力はあり、その木にもサクランボは実るのだそうです。ただしこれは、他種の桜の花粉がソメイヨシノに受粉してできたモノで、当然このサクランボの種から生まれるのはソメイヨシノっぽい雑種であり、ソメイヨシノそのものにはなりません。まあそもそもソメイヨシノ自体が、花が大きくて派手、しかも葉より先に花のみが咲く、つまりは「満開になると見応えのある桜となる特徴」が、人々に好まれて広められた交雑種なのですが…。ただしそのサクランボは、大きさは直径1センチにも満たないものばかりで、肝心の味も渋くて食べられたもんじゃないらしいです。
 ちなみに、今回のソメイヨシノは自家不和合性が強い(=自家生殖しにくい)品種ですが、そもそも自家和合性のある被子植物種は普通に多く存在し、別に珍しくもなんともないそうです。
 また当然と言えば当然なのですが、逆パターンとして、ソメイヨシノが他の桜を受粉させることもあります。桜は品種改良により比較的種類の多い植物ですが、ひょっとすると人間の知らないところで、桜のハイブリッド種が生まれているかもしれません。それが繰り返され、数百年~数千年後には、日本の在来種の桜が日本の野山から消えてしまうということも、充分にあり得る事だと思います。